百 経 ( けいけん ):
教 育・「これからの高等学校教育」:論文より
某総合高校が校長を公募した。
論文と履歴書をおくり、書類審査を経て、面接を受けた。
校長にはならなかったが、そのときの論文を公表する。
日本の教育は変革の時期である。
こんな考えを持つのは、私だけか。(100kei)
info@100kei.com にさまざまな意見をください。
-- 目次(リンク) --
1.はじめに
1.1 社会環境
1.2 私の社会体験と教育課題
1.3 教育に対する問題提起
2.これからの高等学校教育方針の具体化
2.1 基礎教育
2.2 個性を伸ばす教育
2.3 会話ができる英語教育
2.4 文化(歴史)を理解
2.5 マナー教育
2.6 自ら学ぶ
2.7 情報技術(IT)教育
3.新しい高等学校教育で目指すもの
-- 本文--
1.はじめに
1.1 社会環境
日本経済は長期低迷状態に陥り、近年にない失業者を生み出し、不況のどん底にある。その影響で、新卒者も就職難の時代となっている。
経済活動をはじめ、生産部門の海外進出などビジネス活動のグローバル(国際)化が進み日本だけで生活や社会活動のできる時代ではなくなっている。
多くの企業が構造改革に取り組んでおり、大変革の真っただ中にあるといえる。改革は、日本的な終身雇用体制や賃金体系にまで及んでいる。通年採用を取り入れる企業も多くなり、必要な人を必要なとき採用する傾向になってきた。
国内の各企業は、国際社会のなかで、生き残りをかけた「大競争時代」に、まさに突入している。変革の後押しをしているのが、情報技術(IT)革命である。ITの基幹技術はインターネットであり、パーソナル・コンピュータ(PC)である。
IT革命によって、世界が近くなり、変革のスピードが急速であることを認識したい。
1.2 私の社会体験と教育課題
三十数年間のサラリーマン生活を振り返ると、毎日が勉強の連続であった。
大学では、電子回路を真空管工学で学んだ、しかし、すでに世の中はトランジスタ全盛時代、トランジスタ工学を会社で教えてくれることはなく、自ら英語の文献などを読みながら勉強した。
その後、集積回路(IC)が出てきて、論理ICからアナログICへとつぎつぎと実用化され、序々にトランジスタを使って回路設計をしなくても済むように変化していった。
大きな変革は、マイクロプロセッサーの出現だ。誰れにでもコンピュータを使って装置を開発できるようになる。ソフトウェア開発なくして装置機能の実現はない。
学生時代には予想ができなかった技術的大変革に遭遇し、毎日が学習の連続という、日々をおくる。
装置開発のリーダクラスになる三十歳前、簿記を知らないと仕事ができなくなることがわかる。この頃、休日をフルに使い専門学校に通い、日商簿記1級を取得した。
また、一方では、書くことなど、技術者の仕事ではないと思っていたらそれが大変な認識不足であることがわかった。自分の企画などのアイディアを伝えるには、きちんとした企画書が書けなければならない。打合せを行えば、打合せ議事録を書くことになる。エンジニアも文書能力が必要だ。
組織で仕事すると、労務問題にも巻き込まれる。法律、心理学、社会学と、必要となる知識は広がるばかりだ。
また、海外との交流なしに今のビジネスは考えられない。海外に出かけて英語で研修を受けたり、ビジネス交渉の場にでることになる。話すこと、聞くことができる英語が必須となる。
1.3 教育に対する問題提起
「ビジネス活動のグローバル化」、「構造改革」、「IT革命」という大きな変化が今まさに起こっている。この変化は。明治維新より、大きな社会改革ともいわれる。ITに関する日本の利用状況は、明治維新と同様に国際社会からの遅れがあるともいわれる。
日本の教育の現状をみると、沢山の問題が見えてくる。
以下のように重点課題を整理した。
(1) 基礎教育をきちんとやる。
(2) 創造力、判断力など個性を伸ばす。
(3) 使える英語を教える。
(4) 日本をはじめ海外文化を理解する。
(5) 地球人としてのマナーを身につける。
(6) 自ら学ぶという意欲の高揚を行う。
(7) ITを利用した教育を行う。
2. これからの高等学校教育方針の具体化
2.1 基礎教育
社会に出て痛感することは、基礎能力の必要性である。変化の時代こそ普遍的な基礎力が重要となる。「読み(理解力)」、「書き(企画力)」、「そろばん(計算能力)」は、いつの時代にも通用する基礎的能力だろう。
基礎的なものの勉強は、学ぶ側にとって、面白くないことが多いと思う。教える側としては、何に役立つ勉強かを理解させる努力が必要だ。
知識は、スポーツでいう基礎体力であることを再確認したい。スポーツでは、充分に走りこんみ体作りをしなければ、安定したプレーは望めない。もちろんルール(規則、法律)を識らずしてプレーはできない。
いい仕事をしようと思ったら、国語能力、計算能力、表現能力を身に付けることが基本である。
基礎教育は、生産性を意識して、効率的に取り組むべきである。その効率は進学希望者を満足させるものでなければならない。
2.2 個性を伸ばす教育
米国の美術館で生徒と先生の集団をよく見かける。美術館員の説明を聴いた後、生徒に美術品の印象を発表させている。
多くの生徒がわれ先に手を上げ発表をする。いろいろな印象を一人ひとりが語る。明らかに自己表現能力を訓練している。その発表を聴いて、生徒たちは生きいきと輝いている。
どんな意見に対しても、先生は感心し、いろいろな角度から褒めている。実社会では正解がひとつではないことがほとんどである。
実社会では、同じ答えが出てくることはまれだ。できないこと、分からないこと、疑問点を発見すること。問題意識を持つことがいかに大切かを体験させ教えていく必要がある。
感じ方は、多様である。いろいろな意見を受けいれる多様性を認める教育が必要である。
もともと、落ちこぼれなどいないのだ。
能力別学習。目的別学習に取り組む。一様な能力を求めるのでなく、多様性、個性の発見と育成を行う。
例えば、学校祭などのイベントをきちんと取り組むのも良い。生徒の自由的な発想を引き出す場として、利用することが可能だ。
2.3 会話ができる英語教育
日本の英語教育の最大の欠点は、話すこと聞くことができないことだ。会話の基本が抜けている。それは、ネーティブな英語を話せる先生が少なかったからで、使える英語を訓練するには、その環境から見直す必要がある。
ボランティアで協力していただける英語の先生を増やし、会話の機会を増やすことが必要だ。
英会話を伸ばすには、一年程度の海外留学が良い。それも高校時代に1度体験するほうが地元の同年代の生活の中に入っていけるので良いといわれる。
2.4 文化(歴史)を理解
日本国民であるかぎり国を愛し、日本文化を語れなければならない。外国人が自国を語るように、自国の文化や歴史を誇りをもって語れる国民でありたい。受験のための知識の記憶ではなく。
ますますグローバル化が進んで海外に日本人が在住する機会が多くなっている。海外の文化も正しく理解いたい。海外に出る機会には、積極的に取り組みたい。
2.5 マナー教育
これからは地球人として世界で通用するマナーを身につけたい。日本人はまず日本に伝統的にある立ち振る舞いの良さを学ぶべきだ。
茶道、日本舞踊、能などすばらしい立ち振る舞いがあるのだから、鑑賞や実習などを通じて理解し、身につけるべきだ。
日本には、世界に通用する伝統的な良いマナーがある。それをきちんと教えるようにしたい。
もちろん世界のマナーや習慣もきちんと理解し、体験することが必要だ。
2.6 自ら学ぶ
学校の勉強も、達成感や自己実現を求めて目標に挑戦するという点で、遊びやゲーム、スポーツも同様である。
達成感を与えるには、競争心を抑制するのでなく、目標をゲーム感覚でスマートに設定し、それに向けて取り組ませることが必要である。
定期試験での上位者の発表なども取り組むべきだ。
社会とのかかわりあいを学ぶことは大切だ。ボランティア活動には、生徒を参加させていきたい。
実社会で働いている人たちの体験談を聴く機会も作るようにしたい。
2.7 情報技術(IT)教育
パーソナルコンピュータ(PC)とインターネットを使いこなす教育に取り組む。PCは、ビジネスツールになってきている。教育のあらゆる場で使って学習することに取り組みたい。
生徒の能力をうまく引き出して、学びあえるような環境作りに取り組む。
eランニングに取り組み、学校での講義内容は、後日ネットワークを通して再学習できるようにしたい。
3. 新しい高等学校教育で目指すもの
前章で論じた「基礎教育」、「個性を伸ばす教育」、「会話ができる英語教育」、「文化(歴史)を理解」、「マナー教育」、「自ら学ぶ」、「情報技術(IT)教育」を重点的に新しい高等学校では取り組む。
・真っ黒に日焼けした明るい笑顔があって、その目は未来を見つめている。
・みんなが自信に満ち溢れていて、世界中を飛びまわれる地球人となっている。
・社会の一員としての自覚に目覚め、社会を豊かに、明るく、楽しくする術を身に付け、自分の力に合わせて何をすべきかがわかっている。
こんな生徒たちを、社会に送り出したい。
以上。